。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
マネージャーは淡いベージュ色のセットアップスーツに、白いカットソーと言ういでたちで、一見してキリと同じようなファッションだが、こちらは幾分か地味だ。
化粧もそっけない感じで、髪もただ一つに結んだだけ。ただ唇にだけは潤んだ品の良いベージュの口紅だけを引いている。決して美人と言うタイプではないが、どこか好感の持てる顏なのは喋り方や物腰からくるものだろうか。
この女はイチが芸能界入りする際にあてがわれたマネージャーだった。
マネージャーの選別に俺が関わったわけじゃないが、選んだ人間はなかなか目がいいと見える。ぱっと見は、仕事ができるタイプとは言い難いが、だが見た目を裏切って頭が切れるし、かといって真面目過ぎることもなく、そしてyouの手綱をしっかりと握っている。
“あの”イチを相手に怒鳴れる女ってのはなかなかいない。そう言う意味で俺は尊敬している。
「そう言えばこうやって向かい合って二人で喋るの、実ははじめてですよね」
俺はビールを飲みながら言った。
「あ…はい」マネージャーはビールの入ったグラスを両手で包み、それを口に運ぶこともなく俯いている。
「イチに嫌われた、と。どうしてそう思うんですか。
何かあったんですか」
と聞くと、マネージャーがのろのろと顔を上げた。
「最初から謝っておきます。申し訳ございませんでした。
youとあなたにご迷惑が掛かることを、考えず勝手な行動を起こしてしまいまして」
マネージャーは今日一番ではっきりとした口調で謝り、頭を下げた。それはいつもイチと仕事をしているときの“マネージャー”の顔付きだった。
何の事か皆目見当もつかず、俺は彼女の次の言葉を黙って待った。
マネージャーはテーブルに一冊の週刊誌を置き、付箋を貼ったページを開く。
その週刊誌自体、俺はあまり読まないが、たまに時間つぶしでちらりと見たときのことを思い出す。政治経済や事件事故のことを扱う新聞的なものもあるが、芸能人のゴシップネタも扱っていた。
白黒の文字と写真。
見出しには
『乱れた性活!!アイドルグループのリーダーは元風俗嬢で整形していた!!』と黒字で書かれている。