。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
*戒Side*
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** 戒Side **
俺が龍崎家に帰り着いたのはつい一時間前の10時頃。
それから一時間は経過した。
『どこに居たんだよ!お前のGPSが御園医院の近くの茶店で止まってたじゃねぇか!』
朔羅の言葉を思い出し、俺は額を押さえた。
ありゃ完全に怒らせたな。
まぁ怒らせておいた方がいい。俺“たち”の動きを、あいつに探られたくないからな。
11時を過ぎると、茶の間に居る組員の数が半減する。
それでもまだ半数は残っているが、全員酒飲んで賭博に一生懸命で、俺の動きなんて気にも留めない。マサさんも寝たようだし。
俺は足音を殺して、朔羅の部屋に行き、御園医院のサーバー室と、新垣 エリナが働いていたガールズバーに忍び込んだ要領で、ナイフの先をドアと壁の間に入れ、そっと開錠した。
明るい照明がついたままの部屋、朔羅は心地良さそうにベッドで眠っていた。手にケータイを握ったまま。
そのディスプレイには
リコ 090―XXXX―XXXX
と表示されてて、川上に電話してたのか。
ってことは響輔が朔羅にイチと付き合うことを報告したんだよな。
だから詫びか……それとも励ましか…
どっちか。或いは両方するために電話を掛けてたんだな。
朔羅はケータイを握ったまま長い睫を伏せて、俺があげたミラビを抱っこしていて、
その寝顔はあどけないものだった。
朔羅の白い頬にそっと掌で包むと
「……ん…」
朔羅は身じろぎしたが、起きだしてくる気配はない。
俺は朔羅の前髪をそっと撫で梳いて
「……ごめんな、色々説明できなくて……」
答えてはくれないのに、俺は朔羅に向かって小さく謝った。
ここは―――
朔羅の香りで溢れている。
やさしくて、美しく、煌びやかに咲く桜の花。
俺は朔羅の白い額にそっと口づけを落とし、エアコンのリモコンを手にした。
タイマー機能が作動していて、残り1時間ちょいで切れる設定だ。
「悪いな、ちょっと我慢してくれよ?」
誰に言うまでもなく俺はリモコンの『冷房』から『暖房』に切り替え、タイマーも切った。
これで、朝まで蒸し風呂状態だ。