。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
エリナはTシャツの裾をきゅっと握って
「ごめんね……せっかく楽しい旅行なのに…変な問題持ち出しちゃって」
エリナが悪いわけでもないのに、エリナはきゅっと目を強く瞑りながらあたしたちに謝ってきて
「気にするなよ」戒はぎこちなく笑ったが
「……そうだよ…」千里は俯いたまま拳を握り
「新垣さんは何も悪くない。悪いのはそのストーカーだろ!」と、再び語気を荒げた。
「……でも…あたしも悪かったの……まさかこんなことになるなんて…」
「んなの未来なんて誰も想像できねぇだろ、普通。
ましてや俺らは大人からみたらまだまだ子供だ。体は幾ら大人になったからって、心や頭ではまだ追いつかないんだ。
それが“経験”てやつかもしれねぇけど」
千里が真剣に言って、遠くの方を睨み
「軽蔑……しないの…?浅はかだったって…」とエリナがおずおずと目を上げると
「しねぇよ。そんなんストーカーするヤツが100%悪いに決まってんジャン」千里は言い切った。
千里の言葉に全て同意したかったが、100%とは言い難い。ストーカー行為は120%悪意を感じるが、その原因を作ったのはエリナにもある。そんなこと戒も分かってる筈。
けれどあたしたちは何も言わなかった。
だって
千里の―――その横顔は妙に清々しく、あたしが知ってるどんな千里より―――男っぽくて、不覚にもちょっと
かっこいいって思っちゃったジャン。
「よしっ!」
千里は小さく意気込むと、サッと立ち上がった。
どうするのかと思ったら
「新垣さん、ここで朔羅たちと待ってて」と言い置いてコンビニに入っていく。
あたしと戒は顏を合わせて二人同時に首を捻った。
千里は5分と満たないうちに出てきて
「はい」
とエリナにアイスの袋を差し出す。
「とりあえずさ、美味しもん食って、エネルギーチャージしよう。
んで、この旅行を思いっきり楽しむ。
俺たちの……この年の夏は一回こっきりじゃん?楽しまないと損だぜ。
怖かった記憶を楽しかった記憶に塗り替えてやろうぜ」
千里は白い歯を見せてエリナに笑いかけ、エリナはびっくりしながらも千里からアイスを受け取り、
「――――うん」
エリナも千里と同じ、明るい笑顔で力強く頷いた。