。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
あたしはわざと空咳をして
「とにかく姐さんは辞めて。変なイメージが着いたら困るわ」プイと顔を背けると
「じゃぁ何て呼べば…」
「youでいいわよ。リコって子みたいに」
「じゃぁリコちゃんのことも“リコちゃん”て呼んでくださいよ」黒髪くんは唇を尖らせる。
まぁ、そうだったわね。いつまでも『リコって言う子』じゃ呼び辛いし、第一彼女に悪い気がしてきた。
「ねぇ、その愛しの“リコチャン”のどこを好きになったの?」あたしは今度こそ意地悪で聞いてやった。
「ど、どこって!」
案の定、可哀想になるぐらい狼狽える黒髪くん。
「まぁ敢えて言うなら……普通に俺に接してくれた…から…?」
そこ、何で疑問形?
「あ、でも何となく分かるわそれ。響輔も最初あたしを女として見てなかったのよね、今でもきっとそうよ」
「ぇえ゛!こんなキレイな女優なのに!?」黒髪くんは目を丸める。
二度目のキレイ…言われ慣れてる筈だけれど、響輔の知人だと思うと妙に気恥ずかしい。
「いやー…俺なんてふつーに生きてりゃ絶対関わることのない…何て言うか雲の中の人って言うか」
それを言うなら『雲の上』でしょ。雲で隠れてたら意味がないじゃない。
それでも黒髪くんは興味津々で「出会いはどんなだったンすか」とわくわくと身を乗り出してきた。二本目の缶ビールのプルタブを開けている。どうやらお酒が入ったことで変な緊張が抜けたみたい。
まぁあたしも暇だったから、ちょうどいいし。
「出会いはまぁ、カーチェイス」
あっさり言うと
「カーチェイス!!!」また黒髪くんが驚いて「さすが女優スね!!出会いも並じゃなかった…」
女優とカーチェイスとは関係ないのでは??
ま、いっか。
「響輔のヤツ、赤信号突っ切ってあたしを撒こうとしたのよ。何とか追いついたからいいものを、あたしが事故ったらどうしてくれる、って感じよね」
黒髪くんは「うんうん」頷きながら
「でもあのでっかいバイクは憧れるな~まぁキョウスケの兄貴が乗ってるからサマになるんだろうけど」
あら、分かってるじゃない。
あたしには親しい友達とかいないけど、もし居たらこんな話してたのかな。
いや、でもこんなおバカな友達要る?
ま、ツッコミどころ満載だし、飽きないからいっか。
だってあたし今―――
結構、恋バナ楽しんでるから。
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