。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
新垣 エリナの手からオレンジジュースのプラカップがすり抜け、地面に転がった。蓋はついていたものの、衝撃でカップの中の液体が零れ剥き出しの土の上、染みを作っている。
「え―――……」
案の定、新垣 エリナの表情に動揺が浮かんだ。
流石に“不倫”はマズイと思ったのか、それとも現在進行形で“不倫相手”とされてる淫行コーチを思い浮かべたのか。
「嘘……嘘だよ、そんなこと」
何の根拠があって「嘘」と言うのか分からない……ってこともないな、俺だってあいつが妻子持ち(実際には籍には入ってないが)だったて知ったときは衝撃だった。
「だってあのお兄さん、サクラのこと好きそうだったし…」
ああ、あれか……
「あれはアイツの冗談って言うか、アイツのガキ、俺らの年齢に近いし、子供を可愛がってる感じじゃね?」
「え!そんなに大きなお子さんが!?」
と新垣 エリナが口元に手を当てた。
「……でも、ホントなの?そのこと」
「ホントのことだ?サクラも知ってることだし。聞いてみれば?あいつが新垣さんに言わなかったのは、新垣さんを傷つけたくないって思ってたんじゃね?あいつ変な所で義理固いから」
「サクラが……」
新垣 エリナは口元に手をやったまま俯き
「だからさー、アイツなんてやめてもっと近く見ろよ。
あんたの等身大を受け止めてくれるヤツ、近くに居るじゃん」
俺が両手を頭の後ろで組むと
「近くに…?」新垣 エリナが顏を上げた。その顏にはさっきと違った種類の動揺が浮かんでいた。
「等身大のあたしを……って、一ノ瀬くんのこと?」新垣 エリナが聞いてきて
「誰も一ノ瀬のことなんて言ってないケド?」
俺がニヤリと笑うと、新垣 エリナは瞬時に顏を真っ赤にさせてパっと顏を逸らした。
「ズルいよ」
顏を背けたまま新垣 エリナがひとりごちる。
「龍崎くんはズルい…ううん、卑怯」
悪かったなズルくて卑怯で。
「誘導尋問してくるって…」
新垣 エリナは依然顏を背けていたが、ポニーテールをして露わになった白い耳たぶがほんの少し色づいていた。