。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
*鴇田Side*
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―* 鴇田Side *―
殺人的な業務が一段落して、珍しく昼休憩が取れた。休憩が取れたと言っても俺はほとんど社内に留まっていることが多い。
いつ、どんなトラブルが舞い込んでくるか分からないからな。
まぁ俺が居なくても少しのトラブルなら会長お一人でもなんなくかわせると思うが。
だから休憩が取れると、いつもならコンビニの弁当か、デリバリーサービスとか、ときには社食も利用するが、社食は人が多すぎてしかも滅多に行かないからか、やたらと注目を浴びて気が散る。
しかし今日ばかりは事情が違った。
キリは休憩時間を与えられても、本社の近くの公園で出しているキッチンカーでカレーライスを買って、会長室で食べる、と言う。
会長は『会長室をカレーの匂いで満たすな』と顔をしかめていたが、キリが意外においしいと言うと『じゃぁ』と言った具合に興味を持ったようだ。
当然『鴇田、お前はどうする?カレーにするか?もちろん奢りだぞ』と会長は笑って言ってくれたが、俺はそれを丁重にお断りした。
正直、今キリと同じ空間に居るのが苦痛だ。“苦痛”と言える身じゃないのは分かっている。
悪いのは俺だ。
それでも何かの拍子にキリと目が合うと、慌てて視線を逸らしてしまう。向こうも同じなようで必要最小限のことしか俺に訪ねてこない。来たからと言っても俺たちの視線は交わることはなかった。
大した説明もせず「外出してきます」と言うと、それ以上会長は何かツッコんでくることもなかった。
ランチを摂るつもりでぶらぶらと本社の付近を歩き適当な店を探していたが、通り道に某大手のコンビニがあってふらりと入った。迷うことなく雑誌が陳列されているコーナーに向かったが、昨日、イチのマネージャーが言ってた雑誌は見つからなかった。
まだ発売前と言うことか。経済や社会ニュースしか興味が無い俺が、今日は珍しく芸能人のワイドショー的なチャンネルを回してみたが、それらしいニュースは入っていない。
アイドル女優の名前は割と有名で、今高校生や大学生の男たちに絶大な人気を誇っているからな、スキャンダルが流れたらちょっとした騒ぎになると思ったが。
俺としたことが……雑誌の発売日を聞いておくんだった。
しかし後悔したところでもう遅い。コンビニでタバコだけを買い、再び道を歩いていると、大通りに沿って煌びやかなそれでいて洗練され上品なデザインの店を目にして、俺の足は止まった。
それはキリが欲しいと言っていた婚約指輪のブランドの店だった。