。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。



ネズミが、ネズミ捕りの引っかかった。手ごたえは確かにあった。


「ただで教えると思うか?」


俺がにやりと口元に笑みを浮かべると


『なるほど、我々に“取引”を持ちかける気か』


「さっすが、頭の回転が速いな。“警視”の肩書はダテじゃねぇみたいだな」


『無駄話をしてる暇はなくてね―――


こう見えても忙しいんだ』


と間を置かずタチバナが聞いてきて、だがその声音にどこまでも余裕が感じられるのが癪だ。


“さっさとその『取引』とやらを聞かせろ”って言うことか。


まぁこっちも勿体つけるつもりもないが?


「都内のビジネスホテルに匿ってる。場所は―――」


ホテルの所在地を説明して、偽名で宿泊していることを伝え


「女の安全を保証しろ。サツに垂れこんだと知られたら畑中組の連中に消されるかもしれねぇからな。


それも青龍会と白虎会の盃の話がまとまりゃ、あの女も自由の身だ」




『で?それだけじゃないだろ。俺にわざわざ取引を持ちかけてきたから、


他に“取引”内容があるんだろ?



それも、本来の“取引”内容が』




俺たちの会話を黙って聞いていた一ノ瀬の親父が再び俺とケータイの間で忙しなく視線をいったりきたりさせていたが、やがて俺の所で止まった。


タチバナは―――名ばかりの“エリート”ってワケじゃなさそうだ?


予想以上に頭がキレる。


龍崎 琢磨がいっときとは言え、協力を求めるワケが分かった。


俺たちが龍神社で襲われたとき、賽銭泥棒の汚名まで着せられ、だがその後不思議なぐらいあっけなく疑いが晴れた……と言うか、尾行を振り切った。


あのとき、琢磨さんが尾行を止めさせるよう指示した相手は、こいつに違いない。



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