。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
*琢磨Side*
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== 琢磨Side==
“円周率野郎”が、まるで襲撃のようにやってきて、自分勝手に酒を飲み始めて30分が経過していた。
その間はくだらない話をしていた。
主にタチバナの嫁の話とか
嫁の話とか…
嫁の(以下略)
てか、おめぇの嫁どんだけいい女なんだよ!
“この”円周率野郎をメロメロにするとか。
しっかしタチバナの嫁はなかなか激しい性格をしているようで、タチバナはどうやら尻に敷かれてるっぽい。けど、だらしなくデレデレしやがって…
何杯目かのブランデーが空になりはじめた時、タチバナのケータイに電話が掛かってきた。
TRRR…
タチバナはケータイをスーツの内ポケットから取り出したものの、さっきのデレデレ顔から表情を引き締め、だが一瞬顔をしかめて
「何だ?知らないヤツか?嫁?喧嘩でもしてんのか」と俺が聞くと、
「いーや。お前も知ってるひと。
でもこのタイミングで掛かってくるとなると……」
と俺の方にちらりと目配せして、『一体誰なんだよ』と、俺が怪訝そうに目だけを上げると、3コール程鳴ったケータイにタチバナは出ることにしたようだ。
「はい、橘」
と、こいつにしちゃ真面目な受け答えに、益々電話の相手が誰なのか気になった。
俺の気持ちに気づいたのだろうか、タチバナはすぐにケータイをスピーカーにして、俺のデスクに腰掛けていた体を、そっと立ち上がらせた。
『こんな時間にすみません、一ノ瀬です。四課の……一条警部の部下の…』
電話の相手は……一ノ瀬のおやっさん?
しかも今は彩芽の部下だ。
事件を取りあげられて休暇中だと、ご内儀が言っていた。それはもう不機嫌だと愚痴ってたな。
そのおやっさんが、何でこのタイミングで?
タチバナは形式ばった感じで彩芽と別行動を取ってる旨を伝えたが
次の瞬間
『よーぉタチバナ、“洒落た私服"だな。
龍崎 琢磨のバカ倅の虎間だ。
虎間 戒だ』
―――ホントに
バカ倅に違いねぇな。
俺は革張りの椅子に深く背をもたれさせ、空になったグラスにブランデーを注ぎ入れながら顔を覆った。