。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
小さく意気込んでいると、
『そう言えば、あのおにーさん元気?』
“あのおにーさん”てのが誰をさすのか分からなかったが、キョウスケのことだろう。エリナは未だ戒の兄貴がキョウスケだと思いこんでるからな。
「キョウスケ?さぁ昨日以来顔合わせてないけど。あいつに用があるんなら伝えておくけど?」
『違う、違う!』とエリナが電話の向こうで、慌てて手を振ってる様子が思い浮かんだ。
「え、違うの?」
『ほら、最初にあたしのリップが似合わないって指摘して、その後ドラッグストアで会った……』
誰だっけ。
と頭の中でちょっと考えて、
「ああ、タイガのこと?」
そう言えばエリナはタイガのこと気に入ってたしな。
タイガ……
と、さらっと口にしたけれど、
あたしは自分の唇をそっと押さえた。
あいつ、あたしにキスしてきた―――……
夢かもしれねぇけど、夢だったら何でそんな夢…
しかもあいつの唇の感触が妙にリアルで、今も残っている気がした。
開けっ放しになってたロッカーの扉に鏡がついていて、ちらりとそれを覗きこみ自分の唇を眺める。
今日は慌ててたのもあってリップクリームさえ塗ってない。
ちょっとかさついていて血色も悪い気がした。