。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
*一結Side*
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.。*†*。. 一結Side .。*†*。.
時間は遡って1日前のこと。
夜の病院はとても静かだった。
飲んだ薬のせいで、慣れない倦怠感がまだあたしの中でくすぶっている。
けれど、深い眠りには入れず、うとうとしては何となく目が覚める、と言うのを繰り返していた。
その度にケータイで時間を確認して、深夜2時と言うデジタル表示を見たところで、うんざりした。朝までまだだいぶある。
カタン……
近くで、と言うか覚醒しきってなくて半分うつろだったから、その音が実際どこで鳴っているのか分からなかった。
パタン…
また音。
やがて革靴がリノリウムの床に響く足音が近づいてきて、だけどあたしは目を開くことなく眠ったフリ。
見回りの看護師か医者だろうか、目を開けていると要らない気遣いをしそうで、それも面倒だ。
あたしの頭上で気配がして、点滴か何かを調整しているのだろうか、ごそごそと音が聞こえてきて、
ふわり
あたしの頭をその“誰か”が撫でた。
一瞬
響輔?
と、期待したけど、でも響輔じゃないことを何となく知る。
さらりとした冷たい手の感触―――
誰かは……
玄蛇―――……?
玄蛇はあたしの耳元で
「君が無事で良かった」
そっと囁いて、でもその声が少しだけ震えていた。
玄蛇はそれ以上何かをするつもりもないのだろう、その冷たいぬくもりがすぐに離れていき、
再び革靴の音を鳴らして、その音が遠ざかっていくのを定まらない意識の中感じた。
あたしの額に、いつまでも忘れられなさそうな手のぬくもりだけを残して。