。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
響輔が買ってきてくれた『松』弁当は
「おいし~!」
そう、高いお店だと知ってたけど食べたことはなくて、はじめて口にするそのお店の味は思いのほか美味しかった。ちょっとママの味に似てる。
「ほんまや。美味いな」と響輔も筑前煮のようなものを口に入れてもぐもぐ。響輔が食べてる筑前煮が気になってあたしも箸を伸ばそうとして
ゲ
絹さやが入ってる。
「ね、これあげる」あたしは鮮やかな緑色をした絹さやを箸で取り、響輔のお弁当に放り込んだ。
「何で?嫌いなん?好き嫌いしとったら大きならんで?」
「もう成長止まってるわよ。絹さや……昔、イヤって程、※筋を取ってたから(※下ごしらえです)あ、ママのお手伝いで」
「ふーん、そゆうもん?あんた顔に似合わず真面目なんやな。うちのマリナは母親の手伝いろくにせんで遊んでばっかや」
マリナ……?
「ああ、妹や。悪魔リナ(アクマリナ:悪魔なマリナの略)のせいで俺はおかんに怒られっぱなしやった」
響輔はそっけなく言い、あたしが放り込んだ絹さやを口に入れる。
「アクマリナ??てか!あたしが顔に似合わずって!!」
キーっ!!とまたも布団の端をかじって引っ張ってると
「ほれ」と言って、響輔はあたしのバッグをテーブルにトンと置いた。
シンプルな黒いプラダのバッグ。
問題はそれじゃない。
「クマすけ!」
あたしがぎゅっとテディを握ると
「クマすけぇ?」と響輔が奇異なものを見る目つきであたしをテディとの間で視線を行ったり来たりさせている。
「響輔がくれたクマだから『クマすけ』って……げん…」
言いかけて言葉を飲み込んだ。
響輔はあたしが何を言おうとしたのか知ってるくせに
「ふーん……」と口の中で呟き、でも面白くなさそうに
「てか、ネーミングセンス無……」と口を尖らせる。
たとえネーミングが悪くても、響輔があたしにくれたくまちゃん。あたしはすごく大事なんだよ。