。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
飲んだ薬は完全に吐き戻したとは言え、やはり一日は様子見で入院と言うことになったが、元気になった途端、すぐに退院したいとごねる。
「病院食が不味い」
「暇」
とか、何かと理由を付けて退院したがる。その我儘ぷりにいつもなら角を生やして怒るところだが
素直に
「ごめ……なさい…」
としおらしくされると調子が狂う。
俺はイチが何であんな行動を取ったのか謎だったし、イチの方も喋りたくないように思えた。
だから敢えて聞かなかった。話したいときが来たら話すだろう。
親として冷たい、と思われるかもしれないが、人並みの『親』の気持ちを俺が持ちえているとも思えない。だから聞かなかった。聞いたところで俺がイチに何かをしてやれることはない。
しかし……昨夜一晩長椅子に座って居たからか、腰が凝ってかなわん。
腰を撫でさすっているとキョウスケが見舞いに現れた。いつもの無表情を張りつけて。
昨日、派手に言い争い、イチの自殺未遂があって酷く取り乱していたが、互いに昨日のことは口に出さず、いつも通り俺たちは視線を合わせ、そして逸らした。
昼食を理由に廊下に出たところで
「弟よ」
ポン、と肩に手……と言うか骨??が置かれて
………
「お前はもっとまともな登場ができんのか、衛」
俺は背後に立った衛をちょっと睨んだ。
「私のお気に入りの骨格標本でね、名前をキャロラインと言うんだ。フフッ」と衛は相変わらず意味不明の台詞で標本とダンスをするフリ。
我が兄貴ながら本当に謎だ。だが変人なくせに医者としての腕は……
「何なに?キャロラインは弟がタイプじゃないと…ふむ」
腕は良いが、何か癪に触る!
「俺だって骨格標本なんてタイプじゃねぇ!もっと肉付きが良くて、あったかくて…」
と言っていると
「あら♪それは私のこと?」
今度は小さな薔薇の花束を持ったキリが現れ…
きっとイチの見舞いに来たのであろうキリだが
イチが目覚めたと思ったら、厄介な二人が揃った。
言葉通り。
「お義兄さま、お久しぶりです♪なかなかイイ男を連れてらっしゃいますが、私はもっとハートが強い人が好きですわ」
「義妹よ。キャロラインは女性ですよ。フフッ」
ホント!!面倒だな!この二人の会話!