。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
「掛けたまえ」タイガは奥の一人掛けのソファを手で促し、
「その前に」と響輔がタイガの背後に回り込み、肩から足元までポンポンと手を這わせた。
「ハジキなど武器の類はありません」と響輔が言い、
「殺し屋が丸腰とは、俺たちも随分舐めれてるな」と俺はタイガを睨むと
「銃は持たない主義でね。
腰が凝るから」
タイガはうっすら笑い、
こいつ……相変わらずフザケタ野郎だぜ。それとも余裕ってヤツか?
「俺たちの方もするか?」と俺が腕を組みタイガを見上げ、
「その必要はないさ」とタイガはどこまでも余裕顔。だが、俺の顎のラインをそっと撫で、顏を背けた所でタイガの手が俺の首筋を伝って、何かを探るように襟元に移動して、
「“これ”はいただけないな」と俺のシャツの襟から黒い小さな……大きさにしてマイクロSDよりも小さなものを乱暴に取りあげ
「ふーん、今はだいぶ性能がいいと見える」と面白そうに目を細める。
ちっ
俺は内心で舌打ちした。
タイガが奪った“それ”は盗聴器で、タイガはすぐに壊そうとはせず指でそれをつまむと宙に掲げ
「やぁ警察諸君。
オツトメご苦労様。
裏でコソコソするのは君たちの専売特許だな。
さながらドブネズミのようだ。
令状がない今、盗聴は違法な捜査だよ。訴えることも可能だ」
タイガは楽しそうに笑い言い切ると、そのチップをグシャリと握りつぶした。
パラパラと黒い破片が床に落ちる。
くっそ、タイガのヤツ……タチバナの気配に勘付いていたのか。
どうやら、日本一の殺し屋の名はダテじゃないようだ。
忌々しそうに唇を噛みながら結局俺たちは勧められるまま、そのソファに腰を下ろした。
タイガは向かい側のソファの真ん中に腰を下ろし、長い脚を組んだ。
さぁ
ゲームスタートだ。
と言わんばかりに、不適に笑顔を浮かべて。
乗ってやろうじゃん。
お前の“ゲーム”とやらに。
―――だが勝つのは俺たちだ。