恋人は社長令嬢
学校から帰ってきた梨々香は、食事の後も、自分の部屋にこもって、オーボエの練習だ。

これで自分の人生が、決まるのかと思うと、練習にも力が入る。

「…香様、梨々香様!」

ハッとして、声のする方に目を向けると、そこには執事見習いの善が立っていた。

「なあに?善。」

「那々香様からの、言付けです。浴室が空いたそうです。」

「そう…ありがとう。」

「はい。」

頭を下げた善は、部屋を出ようとする時、ふと止まった。

「梨々香様。一言、よろしいですか?」

「なあに?」

「何か、悲しい事でも?」

「何で、そんな事聞くの?」

「音が、死んでるから。」

梨々香は、ハハッ…と笑った。

「善には分かるんだね。」

「これでも、幼なじみだからな。」

相模原家は、ずっと松森家に仕えてきた為、この二人は、幼い時から一緒にいるのだ。
< 123 / 275 >

この作品をシェア

pagetop