初恋+クッキー
「えっ……いいの?センキュー!めちゃくちゃうまそう!」

瀬戸口、お前、俺らの殺気のこもった視線に気付いてないのか?頰を緩ませやがって〜!!

クッキーを渡した女子生徒は、「ありがとう!」と安心したように笑って帰って行く。家庭部の女子はまだ数人いた。俺にクッキーくれる奴はいるのかな?もし、くれるのならーーー。

「田中くん、これ……」

「柊くん、受け取ってください!」

「佐久間くん、これあげる」

「岡田くん、よかったら食べて」

野球部にはない華やかさを纏った女子たちは、俺らの脇を通り抜けて御目当ての男子にクッキーを渡していく。

「めっちゃうま!」

「こんなのもらうの初めて!」

「ありがとう!」

「うわ〜、嬉しい!」

クッキーを女子からもらえた奴らは勝ち誇った笑みを俺らに向けてきた。クソッ!クッキーもらえたからって何だよ!ガキか!

俺の頭に浮かんだのは、入学式で会ったあの子。女子の中でもかなり小さめで、桜の木の下で泣いていた。あの子も家庭部らしいけど、今ここにはいないみたいだ。
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