初恋+クッキー
「すみません……。もう、大丈夫です」

泣き止んだ女子生徒は、俺にニコリと笑顔を見せる。その時、その可愛らしい笑顔に俺の胸がギュッと不思議な音を立てた。何なんだろう?この胸の音……。

俺がボウッとしているうちに女子生徒はいなくなっていて、俺は慌てて自分の教室へと入った。クラスにその女子生徒がいなくて残念だと思う。

それからしばらくして、女子生徒の名前や家庭部に入ったことを知った。クラスが違うため、関わりはほとんどない。でも、その子と廊下ですれ違うだけでも胸がおかしくなるんだ。

この感情が何か知らないまま、俺は秋を迎えている。

「お〜い!いつまで素振りしてんだ?もう練習終わったぞ?」

友達に声をかけられ、俺は「えっ!?」と言って辺りを見回す。本当だ。もうみんな帰る支度を始めている。

「お前、練習熱心だなあ」

友達だけでなく顧問の先生にまでそう言われ、俺は顔を赤くしながらバットを片付ける。練習は好きだが、ボウッとしてしまうのも、練習が終わったことに気付かないのも初めてだ。
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