初恋+クッキー
辺りは薄暗くなっていて、女子を一人で帰らせるには心配だ。こんな時間まで何をしてたんだろう。心配と興味が交差する。

「えっと、これ!」

澤村さんは、かばんの中からラッピングされたクッキーを取り出した。可愛らしくアイシングされている。

「えっ……いいの?」

「うん!牧野くんに作ったものだから!」

薄暗い中でも、澤村さんの頰が赤いことに気付く。やべえ、嬉しすぎてどうにかなりそう。俺は今日一番の笑顔で「ありがとう!!」と言った。

「その……遅くなっちゃったけど、入学式の時はありがとう。入学式の数日前におばあちゃんが亡くなったんだ。頑張って泣かないようにしてたんだけど、堪えられなくて……」

「そうだったんだ……。それは辛いよね」

俺が言うと、「今は平気だから」と澤村さんは笑う。その顔は無理に作ったものではなくて、安心した。

「クッキー、ありがとう。家でゆっくり食べるよ」

「受け取ってくれてありがとう!」
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