終わったはずの恋だった。

コミュニケーションの講義は2人を近づけるのに最適な講義だった。自分のことを英語で話せば話すほど、お互いのことを知っていった。

秋は一人っ子。塾で理科と数学を教えている。意外と甘いものが好き。高校時代はバレー部。父が料理好きでいつもお弁当を作ってくれる。誕生日は6月6日。

英語の講義は二人のその日最後の講義であるため、そのまま一緒に帰ることも多かった。車道側を秋が歩き、満生が右側を歩く。狭い道で後ろから車が来たら、満生の肩を抱き端へ寄せてくれた。

帰る方向が反対方向の満生と秋は駅で別れる。満生が乗る電車のホームに着くと秋は階段を降りて向かいのホームへ渡った。ものの1分もしないうちに向かい側に秋が現れる。ホーム越しに目が合うと、秋は優しい目をしながら手を振ってくるから。

(やりとりが別れを惜しむ恋人のようだ)と思いながらも、満生は微笑みながら手を振り返す。

満生の名前が某ネズミのキャラクターの名前にそっくりだと知ると「みっき」と呼ぶようになった。彼が名前で呼ぶならと満生も「秋くん」と呼んだ。初めて呼んだとき、下の名前で呼ばれることがないからと秋は照れていて、その顔がとても可愛かった。

< 6 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop