終わったはずの恋だった。
どの瞬間から始まったのか満生には分からない。
雪のような恋だった。
色々なことが音もなく降り積もって、いつのまにか好きになっていた。
秋への想いが恋だと気づいたのは自然な流れで連絡先を交換し、しばらく経った頃だった。
『突然、ごめん。三村さんの連絡先って知ってる?』
きっかけは秋が満生に送ったメッセージだ。
三村は満生の女友達。基本、満生以外の女子と喋ることがない秋と接点は殆どなかったはずだが、満生の胸は騒ついた。
『知ってるけどなんで?』
いつもよりつっけんどんな返信だったと思う。満生の焦りをそのまま映し出したような文章だった。
これで『三村さんと仲良くなりたいから』とか『好きだから協力して欲しい』とか返信がきたらどうしよう。
秋からの返信が来るまで満生は気が気じゃなかった。油断していたのだ。彼があまりにも女子との接点が無かったから。根拠のない特別感を抱いては、優越感に浸っていた。
(……いやだ。秋くんの右側は私がいい)
この切ない独占欲の正体に気づかないほど、満生は鈍感ではなかった。
(……好きなんだ。秋くんのこと)
秋への想いを恋だと名付けたら、ストンと心に落ちてきた。
『実験の班が一緒になったんだけど』
『連絡聞きそびれちゃって』
満生が予想していたものとは違う秋からの返信に随分ホッとした。