お見合い夫婦の結婚事情～カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています～

真帆の転職

「真帆ちゃん、あなたの就職先決めてきたわよ」

　夕食時、唐突に告げられた母親の言葉に、入江真帆(いりえまほ)は思わず食べかけの生姜焼きを吹き出しそうになった。
　ごふごふと咳き込む真帆に母の小夜子はお茶を差し出しながら続ける。

「小鳥遊(たかなし)のおじさまにお願いしたのよ」

「おじさまに！？」

　喉の奥に引っかかっている生姜焼きをなんとかお茶で飲み下して、真帆は母に聞き返す。

「そうよ。あなた転職先を決めるって言ってから随分経つのに全然決めてこないじゃないの。心配になっちゃって。今日おじさんに会ったのよ、そしたらちょうど…」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って！」

　痛いところを突かれて再び咳き込みそうになりながらも真帆は母の話を遮る。

「私、そんなことお母さんに頼んだっけ？」