お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 いつのまに蓮の秘書室は女子禁制になったのだと笑いたくなる一方で、先の社員の言葉が蓮の心に引っかかる。
 入社してから、ほとんど毎日真帆は社食へ通っていた。
 朝のコーヒーの時間に嬉しそうに話していたこともある。
 おそらく本人も気がつかないうちに男性社員の目を引いていたのだろう。

『副社長の社食視察についてきてるなら、秘書だろう?…お気に入りか?』

『まさか!!どんな美人秘書にも揺らがなかった堅物副社長だぜ?…大丈夫だよ。今度、話しかけてみようっと…』

 蓮は振り返って彼らの社員証を確認したい衝動をなんとか抑え込んだ。
 何課の誰ということを知ってしまったら、明日からの業務に支障が出るような気がしたからだ。
 けれどそれでいて彼女の分のお茶を取りに行くというのはどうしても譲れなかった。
 まるで彼女が自分にとってただの秘書ではないと周囲に牽制するような行動だ。
 まったく、いつもの自分らしくないと蓮は自嘲する。
 一条にからかわれても仕方がないのかもしれない。
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