お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 窓際の席で明るい日差しを浴びながらアジフライを頬張る彼女を見つめながら蓮は自らの彼女に対する気持ちと向き合っていた。
 祖父からの紹介で入った社員、蓮の見合い相手、そのフィルターを外してみると彼女は間違いなく良い社員だ。
 もちろん未熟な部分は沢山あるけれど何事にも一生懸命で意欲的、勉強熱心だった。
 若い分、伸びしろも期待できる。この採用不況の時代に、掘り出し物だと言っていいだろう。
 それ以上に、自分が彼女に惹かれつつあるという事実にも蓮は気がついていた。
 朝、コーヒーを持ってくる彼女から天気予報を聞いたり、たわいもない冗談を言い合うことは、馬の眼を射抜くようなビジネスの世界で生きる蓮にとっての唯一の癒しとなりつつある。
 蓮がからかうと頬を膨らませたり、染めたりする様子はいつまで見ていても飽きなかった。
 10歳も年下だ、子供のようなものだと自らに言い聞かせ心にブレーキをかけても浮き立つ気持ちが止められない。
 けれどやはり蓮の胸には父の話が燻っていた。
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