お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
噂話と真帆の気持ち
 なんだか見られているような気がする。真帆がそう思ったのは出勤時に本社のエントランスに入った瞬間だった。
 
『あ、あの子よ…昨日の…』

 という声を背中で聞いて、昨日蓮と社食へ行ったことで顔を知られてしまったのだということに気がついた。食券機に並んでいる時から気がついてはいたけれど昨日の蓮と真帆はやはり相当目立ってしまっていたのだ。
 
(でも、あれはあくまでも副社長の社食視察に秘書として同行しただけなのに…)

 真帆は心の中で言い訳をする。なぜかそうしなくてはいけないような気がした。それほど、彼と過ごす初めての昼食は真帆に衝撃を与えた。
 蓮と一緒に食券機の列に並び、同じ物を食べた。
 メニューについてあれこれと真帆に質問したり、窓から見下ろす街をのんびりと眺める姿は、副社長ではないただの"藤堂蓮"を垣間見るようで真帆の気持ちを浮き立たせた。
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