お見合い夫婦の結婚事情～カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています～
　もしかして彼もあの社食デートとかいうくだらない噂を耳にしたのではないか。だとしたら真帆のような一般社員とあらぬ噂を立てられて彼が困惑しているのも頷ける。
　果たして、真帆の予想は当たった。

「さっき、一条から聞いたんだ。昨日の…君と私が社員食堂に行ったことについて…いろいろと言われていると」

　やっぱり、と真帆は反射的に目を瞑る。頬が羞恥で真っ赤に染まった。
　真帆のような新入社員が副社長である彼と何かあるはずなどないのに…噂だけならいざ知らず、それをよりによって本人に知られてしまうなんて。
　周りに誤解を与えたのなら、それはただの秘書だと言いながらそれらしく振る舞えなかった自分の責任だ。浮き立つ気持ちを抑えられず親しげに振る舞ってしまった。あらぬ噂が立ってしまって、彼に迷惑だと思われても仕方がない。
　真帆の胸がチクリと痛んだ。
　どのように答えていいかわからずに彼の目を見ることすらできない。
　そんなことを考えでうつむく真帆に蓮の意外な言葉が降ってきた。

「私の軽率な行動のせいだな。…申し訳ない」

　真帆は顔をあげる。

「ふ、副社長、そんな…！違います！私のせいです！」

お盆を胸に抱いて首を振る。

「わ、私がちゃんとした秘書に見えなかったから…私こそ、も、申し訳ありません」

「いや、私の責任だ、君のせいじゃない」

　蓮は真摯な眼差しで真帆を真っ直ぐに見ている。
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