お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
唇の温もりが離れたのをなごり惜しむように、真帆の唇から声が漏れる。至近距離にある蓮の瞳がわずかに揺れた。
「…そんな目で俺を見るくせに」
眉を寄せた蓮がそう呟いたとき、2人の間の空気を破るように彼のデスクの電話が鳴った。
一瞬の間のあと真帆を拘束していた蓮の腕が解かれる。真帆は何事もなかったかのようにデスクへ戻る彼を視線だけで追った。
「はい。あぁ、…いや、こちらはちょっと。…あぁ、それなら大丈夫だ。…では10分後に」
蓮の電話に直接内線をかけることができるのは秘書室以外では役員だけだ。そして何においても対応が速い彼にはこうやって直接役員から電話が入ることも少なくはない。
今も誰かから話があると言われたのかもしれない、立ち上がってスケジュールの確認をしなくてはと頭では思うのに真帆の体は動かなかった。
「…池内専務のところへ行ってくる」
そう告げてデスクのタブレットを掴んだ蓮はドアの方へ真帆の前を横切ってゆく。そしてそのまま茶色い重厚な扉の向こうへ消えて行った。
そのドアをじっと見つめたまま真帆はしばらく立ち上がることができなかった。
「…そんな目で俺を見るくせに」
眉を寄せた蓮がそう呟いたとき、2人の間の空気を破るように彼のデスクの電話が鳴った。
一瞬の間のあと真帆を拘束していた蓮の腕が解かれる。真帆は何事もなかったかのようにデスクへ戻る彼を視線だけで追った。
「はい。あぁ、…いや、こちらはちょっと。…あぁ、それなら大丈夫だ。…では10分後に」
蓮の電話に直接内線をかけることができるのは秘書室以外では役員だけだ。そして何においても対応が速い彼にはこうやって直接役員から電話が入ることも少なくはない。
今も誰かから話があると言われたのかもしれない、立ち上がってスケジュールの確認をしなくてはと頭では思うのに真帆の体は動かなかった。
「…池内専務のところへ行ってくる」
そう告げてデスクのタブレットを掴んだ蓮はドアの方へ真帆の前を横切ってゆく。そしてそのまま茶色い重厚な扉の向こうへ消えて行った。
そのドアをじっと見つめたまま真帆はしばらく立ち上がることができなかった。