お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
父の最期を知らせたのはある冬の夜の病院からの電話だった。
電話があってすぐに真帆は母と駆けつけたのだが、到着したときにはすでに父は息を引き取ったあとだった。覚悟はしていたとはいえ、それからしばらくは母も真帆も電話が鳴るたびにびくりと肩を震わせたものだ。
「…真帆さんはいつもしっかりされているので…尚更、心配で付いてきてしまったのですが、大事でなくてよかったです」
蓮が穏やかに小夜子と言葉を交わすのを真帆は不思議な気持ちで見つめていた。
「…職場の同僚が私の鞄から真帆の名刺を見つけて勝手に病院に伝えてしまって、藤堂さんもお仕事があったでしょうに…」
「あ、そうよ。お母さん!」
真帆は小夜子の言葉を遮った。
「ステーションホテルから運ばれたって聞いたわ!どういうこと?」
小夜子は父亡き後、専業主婦を返上して働きに出ている。小鳥遊の叔父を頼って丸大百貨店の呉服部門で週に五回ほど、パートをしているはずだ。それなのに職場で倒れたと言って運ばれたのはステーションホテルというビジネスホテルからだというじゃないか。
真帆の問いかけに、小夜子は視線を泳がせた。
「百貨店は?辞めたの?」
「…辞めてないわよ」
小夜子はいたずらが見つかった子供のように口を尖らせている。
「じゃあ、なんでステーションホテルでも働いてるのよ!」
父が亡くなってすぐは、金銭的に困窮した時期があったとはいえ、今は大人の二人暮らし。真帆もお金を入れているので生活には困らない筈だ。
「だって、百貨店は週に5回までしかシフトを入れられないのよ」
電話があってすぐに真帆は母と駆けつけたのだが、到着したときにはすでに父は息を引き取ったあとだった。覚悟はしていたとはいえ、それからしばらくは母も真帆も電話が鳴るたびにびくりと肩を震わせたものだ。
「…真帆さんはいつもしっかりされているので…尚更、心配で付いてきてしまったのですが、大事でなくてよかったです」
蓮が穏やかに小夜子と言葉を交わすのを真帆は不思議な気持ちで見つめていた。
「…職場の同僚が私の鞄から真帆の名刺を見つけて勝手に病院に伝えてしまって、藤堂さんもお仕事があったでしょうに…」
「あ、そうよ。お母さん!」
真帆は小夜子の言葉を遮った。
「ステーションホテルから運ばれたって聞いたわ!どういうこと?」
小夜子は父亡き後、専業主婦を返上して働きに出ている。小鳥遊の叔父を頼って丸大百貨店の呉服部門で週に五回ほど、パートをしているはずだ。それなのに職場で倒れたと言って運ばれたのはステーションホテルというビジネスホテルからだというじゃないか。
真帆の問いかけに、小夜子は視線を泳がせた。
「百貨店は?辞めたの?」
「…辞めてないわよ」
小夜子はいたずらが見つかった子供のように口を尖らせている。
「じゃあ、なんでステーションホテルでも働いてるのよ!」
父が亡くなってすぐは、金銭的に困窮した時期があったとはいえ、今は大人の二人暮らし。真帆もお金を入れているので生活には困らない筈だ。
「だって、百貨店は週に5回までしかシフトを入れられないのよ」