お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
真帆は思わず立ち上がった。病室の粗末なパイプ椅子がガタンと音を立てて倒れた。
「私もうちゃんとした社会人なのよ!大学の費用くらい自分で工面できるわ。おじさまにだって頼らなくてもいいのに、そんなことしてお母さんが倒れたら意味ないじゃない!」
頭に血が昇って、顔が真っ赤になるのが自分でもわかったけれど言わずにはいられなかった。夕方、電話を受けた時の胸が潰れるような思いが鮮やかに蘇った。
「…そうね、心配かけてごめんね、真帆ちゃん」
小夜子が謝るのを見ても真帆の怒りは収まらなかった。母の中で自分はいつまでも小さい子供のままなのだ。それは仕方がないとしても、もう少し頼ってくれたっていいじゃないか。
「私に相談もなくもうこんなこと…!」
なおも小夜子を詰る言葉を続けようとする真帆だったが、両肩が暖かいものに包まれたような気がして振り返る。
蓮だった。
大きな手で真帆の両肩を優しく掴んでいる。
「…入江さん、お母さまはまだ体調が万全ではないのだから…」
真帆は突然彼の存在を思い出して口をつぐんだ。少し茶色い切れ長の瞳が真帆を心配そうに見下ろしている。それを吸い込まれるように見つめて少しだけ冷静な部分が戻ってきた。
「私もうちゃんとした社会人なのよ!大学の費用くらい自分で工面できるわ。おじさまにだって頼らなくてもいいのに、そんなことしてお母さんが倒れたら意味ないじゃない!」
頭に血が昇って、顔が真っ赤になるのが自分でもわかったけれど言わずにはいられなかった。夕方、電話を受けた時の胸が潰れるような思いが鮮やかに蘇った。
「…そうね、心配かけてごめんね、真帆ちゃん」
小夜子が謝るのを見ても真帆の怒りは収まらなかった。母の中で自分はいつまでも小さい子供のままなのだ。それは仕方がないとしても、もう少し頼ってくれたっていいじゃないか。
「私に相談もなくもうこんなこと…!」
なおも小夜子を詰る言葉を続けようとする真帆だったが、両肩が暖かいものに包まれたような気がして振り返る。
蓮だった。
大きな手で真帆の両肩を優しく掴んでいる。
「…入江さん、お母さまはまだ体調が万全ではないのだから…」
真帆は突然彼の存在を思い出して口をつぐんだ。少し茶色い切れ長の瞳が真帆を心配そうに見下ろしている。それを吸い込まれるように見つめて少しだけ冷静な部分が戻ってきた。