お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 思いがけずまたその機会に恵まれたことが泣きたくなるほど嬉しいなんて。
 そんな真帆を見て蓮が申し訳なさそうに眉を寄せた。

「確認しておきたいんだが…君がうちの会社へ来たのは、小鳥遊グループの小鳥遊会長の紹介だったね」

 "答え合わせ"が始まったのだと、真帆は笑いを引っ込めて頷いた。

「以前勤めていた法律事務所が閉鎖になったんです。それで小鳥遊の大叔父に紹介してもらいました」

「大学は、途中でやめたのか」

 冷たい水が入ったグラスをくるくると回しながら真帆は俯いた。

「はい、3年生の冬に父が亡くなって、学費が払えなくなったので…もちろん、奨学金でもなんでも方法はあっただろうと思いますが、そのときは母が憔悴しきっていて、とても働ける状態じゃなかったから…」

 チラリと蓮を見ると、切れ長の瞳が静かな眼差しで続きを待っている。それに励まされるように真帆は言葉を続けた。

「母は小鳥遊家の人間ですが、父との結婚を反対されて駆け落ち同然で家を飛び出したんです。その時に絶対に経済的に頼らないって祖父と約束したみたいで…」

 真帆は言葉を切って、少し長いため息を吐いた。
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