お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
「私はべつにそれでいいと思っていました。裕福でなくても父と母の家庭で私は幸せに育ちましたし、ちゃんとした就職先もあったんですから。…でもさっきの話だと母はそれを気に病んでたんですね…」
さっきの母の悲しそうな瞳を思い出して真帆は憂鬱な気分になった。
「だから、法律事務所が閉鎖になるときに躍起になって私の就職先を探してきたのかもしれません。経済的には頼らないって言いながら、働き口の紹介はオーケーなんてなんだか変な話かもしれませんが…」
「それで君はうちに来たわけか」
蓮が静かに口を開いた。
こくんと真帆は頷く。
「ちゃんとした採用試験も受けていないのに、すみません…」
少しだけ声が震えてしまったことを情けなく思う。けれどある意味で、こうやって彼に直接謝罪することができてよかったとも思った。
なんとなくだけれどそこに彼と自分のかけ違いがあるような気がしていたから。
「そのことなら気にしなくていい」
俯いたままの真帆を安心させるように蓮の力強い言葉が降ってくる。
「もちろん藤堂不動産(うち)は、新規採用が主だが、それ以外のルートで採用になる社員もたくさんいる。縁があってそれぞれがそこで力を発揮してくれればそれでいい。…それよりも君は、採用にあたって小鳥遊会長から何か聞かなかったか。この仕事について」
さっきの母の悲しそうな瞳を思い出して真帆は憂鬱な気分になった。
「だから、法律事務所が閉鎖になるときに躍起になって私の就職先を探してきたのかもしれません。経済的には頼らないって言いながら、働き口の紹介はオーケーなんてなんだか変な話かもしれませんが…」
「それで君はうちに来たわけか」
蓮が静かに口を開いた。
こくんと真帆は頷く。
「ちゃんとした採用試験も受けていないのに、すみません…」
少しだけ声が震えてしまったことを情けなく思う。けれどある意味で、こうやって彼に直接謝罪することができてよかったとも思った。
なんとなくだけれどそこに彼と自分のかけ違いがあるような気がしていたから。
「そのことなら気にしなくていい」
俯いたままの真帆を安心させるように蓮の力強い言葉が降ってくる。
「もちろん藤堂不動産(うち)は、新規採用が主だが、それ以外のルートで採用になる社員もたくさんいる。縁があってそれぞれがそこで力を発揮してくれればそれでいい。…それよりも君は、採用にあたって小鳥遊会長から何か聞かなかったか。この仕事について」