お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
瞼(まぶた)が作る仮初(かりそめ)の闇に逃げ込んだところで、彼の呪文からは逃げられない。
真帆は大きく息を吸い込んで観念したようにゆっくりと吐いた。そしてぎゅっと瞳を閉じたままゆっくりと頷く。
「よかった、…ありがとう」
かけられた言葉に目を開いて見上げてみれば、安堵したように微笑む蓮の眼差しがそこにあった。
「こんなに緊張したのは、ひさしぶりだ」
そんなことがあるはずがない。
何万人もの社員の上に立つ彼は、常に会社の未来を左右する決定を下す立場にある。
巨額のお金が動く商談に臨むことも多いはずの彼が、一社員でしかない真帆の答えに一喜一憂するなんて。けれど一方で、今この時に、彼も自分と同じような胸の高鳴りを感じているのかもしれないと思うと真帆の心が暖かい何かで満たされてゆく。
大きな手が再び真帆の髪をかきあげて、さらさらという感触を楽しむように撫でた。そして頬を辿り、親指が唇をノックする。
「…この前のやり直しをさせてくれないか」
そう問いかけておきながら、彼は真帆の答えを待つつもりは全くなかったらしい。
何のやり直しかと聞き返そうと開いた真帆の唇に蓮のそれが覆いかぶさった。
真帆は大きく息を吸い込んで観念したようにゆっくりと吐いた。そしてぎゅっと瞳を閉じたままゆっくりと頷く。
「よかった、…ありがとう」
かけられた言葉に目を開いて見上げてみれば、安堵したように微笑む蓮の眼差しがそこにあった。
「こんなに緊張したのは、ひさしぶりだ」
そんなことがあるはずがない。
何万人もの社員の上に立つ彼は、常に会社の未来を左右する決定を下す立場にある。
巨額のお金が動く商談に臨むことも多いはずの彼が、一社員でしかない真帆の答えに一喜一憂するなんて。けれど一方で、今この時に、彼も自分と同じような胸の高鳴りを感じているのかもしれないと思うと真帆の心が暖かい何かで満たされてゆく。
大きな手が再び真帆の髪をかきあげて、さらさらという感触を楽しむように撫でた。そして頬を辿り、親指が唇をノックする。
「…この前のやり直しをさせてくれないか」
そう問いかけておきながら、彼は真帆の答えを待つつもりは全くなかったらしい。
何のやり直しかと聞き返そうと開いた真帆の唇に蓮のそれが覆いかぶさった。