お見合い夫婦の結婚事情～カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています～

　美咲は形のいい眉を寄せた。
　たしかに蓮と美咲ならお似合いだろうと真帆は思う。背の高い蓮の隣にこれまたスラリとスタイルのよい美咲が並ぶ姿が頭に浮かび、真帆の胸がキリリと締め付けられるように痛んだ。

「でも私にはもう彼がいるんだもの。おじいさまったら安請け合いして…。お見合いを強要するなら小夜子おばさまみたいに駆け落ちするわよって言ったら慌ててたわ」

　そう言って美咲はふふふと笑った。
　小夜子の駆け落ちは、小鳥遊家でも語り草になっているらしい。当初、誰もがどうせすぐ泣いて帰ってくるだろうと思っていたところ、小夜子が予想に反して子どもまで作って幸せに家庭を築いたものだから、今は亡き真帆の祖父母は、あとになって随分と後悔したという。
　それを間近に見ていた小鳥遊の大叔父は、同じことになってはいけないと焦ったのだろう。
　そうは言っても藤堂の方とは約束をしてしまった…。

「だからって…なんで私に…」

　真帆は親戚全てを把握できているわけではないが、小鳥遊家には適齢期の娘がまだ何人かはいるはずだ。よりによって、血が繋がっているだけで小鳥遊家の外で育った真帆を選ばなくてもいいのに…。

「あら、そんなの真帆が一番良い子だからに決まってるじゃない！おじいさまは、私がだめと分かるとじゃあ誰がいいかって私に聞いたわ。私、迷わず真帆の名前をあげたの。おじいさまはもともと小夜子おばさまを可愛がっていたから、あなたのこともとても気にかけていたでしょう？就職先としても結婚のお相手としても申し分ない話だもの。じゃあ、真帆にってなったの」