お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 小夜子は今度は大きな声でまぁ、と言って目を吊り上げた。

「何を言ってるの!真帆ちゃん。誰に言われたの?」

「え?や、べつに誰にも言われていないけど…でもそうじゃない?」

「そうじゃないわよ!確かにうちは普通の家庭だけれど、真帆ちゃんが藤堂さんに釣り合わないっていうなら…あなた、お父さんとお母さんの結婚をどう思っているの?」

 真帆はあ、と呟いて黙り込んだ。
 そうだ今の今まで忘れていたけれど、小夜子はもともとは名家のお嬢様で、貧乏学生だった父と恋に落ちて結婚したのだ。それでもとても幸せな家庭を築いた。"釣り合わない"なんて言葉は父を侮辱することに他ならない。特に真帆は絶対に言ってはいけない言葉だ。

「真帆ちゃんはとても努力家だし、気立てもいいわ、どこに出しても恥ずかしくないお母さんの自慢の娘なのよ。どんな家の出身かなんて関係ないわ。そうでしょう?」

 愛情溢れる小夜子の言葉に真帆は少し涙ぐんで頷いた。

「お父さんとお母さんも散々言われたのよ、そういうこと。あの頃は今よりももっとそういうしがらみが酷かったから…」

 小夜子は長いため息を吐いた。
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