お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
「ほらほら、その、人を睨む癖をやめなさい」

 和正が顔をしかめる。
 睨んでいるつもりはないが蓮には相手をじっと見つめるクセがある。もともと目つきがいい方ではないが、そうされると相手は必要以上に萎縮してしまうという。
 蓮からしてみれば知ったことかと言いたい気持ちもあるが何万人という社員の上に立つ身であればそれも良くないのかもしれない。普段は意識して柔和に見えるように努めている。
 けれど、疑問に思うことがあるとついつい相手をじっと見つめてしまい、怖がられてしまう癖はなかなか抜けなかった。

「この前の会議でも人事部長を睨んでいただろう。彼、震え上がっていたじゃないか」

「あれは彼の会議への準備が足りなかったからです。何もやましいことがないのであればあそこまであたふたする必要はないでしょう。…それより社長、さっきの話ですが」

 蓮はウイスキーを一口飲んで喉を潤してから話を続ける。

「私の秘書室に新しいアシスタントが入るのですか。…確かに一条は多忙ですが、アシスタントはもうすでに2人いてこれ以上必要なようには思いませんが」

 蓮の秘書室のメンバーは3人、第一秘書の一条、あとは彼のアシスタントをしている若い男性社員が2名だ。
 余裕があるとは言い難いが、人手不足というほどでもないはずだ。

「必要かどうかは社長である私が決める。少なくともお前には必要な女性だ」
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