お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
「無理しなくていい…泊まるだけでもいいんだぞ」

「無理なんてしてません!」

 自分でも思ったより大きい声が出て、真帆は目を開く。視線の先には優しい蓮の眼差しがあった。
 大きな手が少し湿った真帆の髪をかきあげて、頬を包む。

「真帆には成長してほしいと言ったが、このことに関しては完全に分けて考えていい。俺は真帆のペースに合わせるよ」
 
 頬の温かさを心地よく感じながらも真帆は首を振る。

「本当に…大丈夫です。た、確かに今日の今日こうなるとは思いませんでしたけれど。でも、考えてみればこうなってよかったのかもしれません。何事も勢いが大事ですから!」

 真帆が少し意気込んで言うと、蓮は驚いたように頬を撫でていた手を止めた。そして肩を揺らしてくっくと笑った。

「…無理してるじゃないか」

「だから無理してません!皆してることなんだから、私にだってできるはずです!」

 蓮が今度ははははと声をあげて笑った。真帆は心外だというように、蓮を睨む。
 一方で、こういうときの言動として何が正解かがわからずに少し不安になった。せっかく蓮がいい雰囲気でここまで連れてきてくれたのにムードを台無しにしてしまったかもしれない。

「君は本当に負けず嫌いだな」
< 228 / 283 >

この作品をシェア

pagetop