お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 人が寝食を惜しんで仕事をしているというのにいったいどういうつもりかと頭が沸騰しそうになった。
 将来を見据えて社長業務を徐々に副社長である蓮に移行しているところだが、そんなことをする暇があるのであれば元に戻してやろうかという考えが頭をよぎった。
 けれど人事部長を震え上がらせる蓮の睨みも父には効かない。

「お前がことごとく見合いの話を断るからだ」

 和正はこれまた歳に似合わない若々しい仕草で口を尖らせた。

「見合いをしたくないのはわかった。だが人事異動なら文句は言えんだろう」

 どうだと言わんばかりに胸を張る父を蓮はやや唖然として見る。まさか蓮の結婚のためにここまでやるとは。けれど見合いなら断れても正式な会社の決定とあらば無下にもできないのは確かだった。
 もちろん人事に文句をつけることはできるだろうが背後に社長(ちち)がいるのであればそれも無駄だろう。
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