お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
「…そう堅苦しく考える必要はないと思うが」
一条が手にしていたタブレットの画面を閉じて脇に持った。彼が敬語を外すときは友人として話をしているという合図だ。
「出会いの一つだと思えよ。…べつに、強制されているわけじゃあるまいし。このままお前の独り身生活が続いたら、俺とお前の恋人説がますます広まるぜ。そしたら俺もいい迷惑だ」
蓮はくだらない、と吐き捨てるように言った。そのような噂があることは知っているがバカバカしくて話をする気にすらならない。
「そうじゃなくても最近のお前は働きすぎだ。副社長就任からこっちまともに休みもとってないだろう。就任当初言われた若い御曹司に何ができるという雑音はもうない。誰もがお前の実力は認めている。そういう意味で、このへんで少し仕事以外のことにも目を向けてみたらどうだ。じゃないと続かないぜ」
蓮は憮然として机を人差し指でとんとんと叩いた。
「…それが女か」
「そうだ。気が合えばそれにこしたことはないじゃないか。お前だって頑なに独身を貫くつもりはないんだろう?」
まぁな、と言って蓮は窓の外に視線を移した。青空の下に都心の街が広がっている。あまりにもばかにしたような父親の話に頭に血が昇って、一条には裏切られたような気持ちでいたけれどどうやらそれだけでもないらしい。
一条が手にしていたタブレットの画面を閉じて脇に持った。彼が敬語を外すときは友人として話をしているという合図だ。
「出会いの一つだと思えよ。…べつに、強制されているわけじゃあるまいし。このままお前の独り身生活が続いたら、俺とお前の恋人説がますます広まるぜ。そしたら俺もいい迷惑だ」
蓮はくだらない、と吐き捨てるように言った。そのような噂があることは知っているがバカバカしくて話をする気にすらならない。
「そうじゃなくても最近のお前は働きすぎだ。副社長就任からこっちまともに休みもとってないだろう。就任当初言われた若い御曹司に何ができるという雑音はもうない。誰もがお前の実力は認めている。そういう意味で、このへんで少し仕事以外のことにも目を向けてみたらどうだ。じゃないと続かないぜ」
蓮は憮然として机を人差し指でとんとんと叩いた。
「…それが女か」
「そうだ。気が合えばそれにこしたことはないじゃないか。お前だって頑なに独身を貫くつもりはないんだろう?」
まぁな、と言って蓮は窓の外に視線を移した。青空の下に都心の街が広がっている。あまりにもばかにしたような父親の話に頭に血が昇って、一条には裏切られたような気持ちでいたけれどどうやらそれだけでもないらしい。