お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 たしかにここ数年は朝も夜もなく働いた。息抜きも必要だという一条の言葉は秘書としても友人としても頷ける。
 けれどその息抜きが女性との付き合いだとはどうしても思えなかった。

「相手は、小鳥遊グループの令嬢らしい」

 蓮はやや声を落として言った。
 小鳥遊グループといえば藤堂にも負けない名門だ。そんなところから話をもってこられるところはさすが祖父だと言わざるを得ない。だが令嬢というのはプライドが恐ろしく高く付き合いにくいというのが蓮の感想だった。

「まぁ、会長がもってきた話ならそうなるだろうな」

 一条はやや同情する様に蓮から視線を外した。

「どうせ苦労も知らない世間知らずのわがままなお嬢様だ。手なんか出せば、結婚へ一直線さ。そんな相手と息抜きもなにもないだろう。…まぁ、いい。アシスタントの件はお前に任せる。俺にその気がないとわかればすぐにでも自分から出ていくだろう」

 蓮はそう言って右手で軽く机を叩くと午前中の会議に出るべく立ち上がる。無理矢理頭からアシスタントのことを追い出して、会議へ向かうことにした。
 一条が一礼して部屋を出て行った。
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