お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
「…なぜ、姉さんが行かないの?」

 せっかく義雄が美咲のために用意した場なのに。
 すると美咲はピンクの唇をきゅっとつぼめて、少し考えるような仕草を見せてから口を開いた。

「…実は私、もうお相手がいるの」

 秘密めいた美咲の囁きに真帆は目を見開いて鏡越しに美咲を見つめる。

「お相手って…、結婚の?」

「そう。すぐにでも結婚したいから、社会勉強している暇はないのよ。…真帆は今彼氏はいないんでしょう?」

 真帆は意外だった美咲の告白に驚きながらも頷いた。彼氏なんて"今"どころか一度もいたことはない。それは美咲も知っている筈だ。

「あぁ、良かった」

 美咲は可憐な笑顔を見せて胸を撫で下ろしている。

「私がおじいさまにアドバイスしたのよ。真帆なら適任じゃないかしらって。そしたらちょうど小夜子おばさんがいらして真帆が転職するっていうじゃない。ほんとグッドタイミングだったわ。しかも真帆には彼氏がいないし…」

 真帆は肩より随分と上まで切られてしまい軽くなった頭をかしげた。
 確かにこんなにぴったりのタイミングも珍しい。就職は縁だと思っていたけれど、美咲の話が本当であれば真帆に縁があったということだろう。
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