お見合い夫婦の結婚事情～カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています～

　真帆は不機嫌そうな彼の横顔を観察する。男らしい眉に切れ長の瞳、高い整った鼻梁、一直線に結ばれた薄い唇が恐いという印象だった。
　まだ今日という日は始まったばかりなのに何がそんなに気に食わないのだろうと真帆は訝しみながら、コーヒーを置いた。
　朝に弱いのだろうか？
　けれど兎にも角にも、自己紹介はしなければと一歩下がると姿勢を正した。

「本日より秘書室に配属になりました入江真帆です。よろしくお願いします！」

　真帆は腰を折って礼をした。
　美咲に『真帆ちゃんは童顔だけどそれが魅力なんだから絶対ショートボブがいいわよぅ』と勧められて切ったスッキリとした頭を上げると、副社長とまともに目が合った。

（うわぁ、恐い…）

　彼は緊張して少し声が大きくなってしまった真帆をじっと見ている。
　真帆の頭に一条が言われた言葉が浮かぶ。萎縮しないでいいと言われたことも思い出したけれど、とてもじゃないけれどそれは無理そうだ。
　先ほど男らしいと思った眉をよせて彼は射抜くように真帆を睨んでいるのだから。
　そして少し訝しむように口を開いた。