お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 藤堂は口を尖らせた。
 そんな仕草はとても大企業の社長のものは思えなくて、真帆はくすくすと笑った。
 藤堂がそんな真帆を見て目を細めた。

「入江君、息子を頼んだよ。君には期待しているからね」

優しそうな眼差しを受けて真帆は力強く頷いた。どうやら、藤堂は息子である蓮が心配で真帆に会いにきたのだと真帆は合点する。
 いい歳した息子に、少々過保護だと思えなくもないが自身の母の小夜子を彷彿とさせるものもある。なんだか少し親近感が湧いてしまった。

「はい!精一杯、がんばります」

 真帆が元気よく答えると、藤堂は満足そうに微笑んで帰って行く。慌てて田中が後を追っていった。
 それを見届けてから振り返ると、相変わらず仏頂面の蓮と目が合う。
 まるで余計なことを言うなとでも言いたげに睨まれて思わず真帆は、なんですか?と尋ねてしまいそうになる。
 入社一日目で少々萎縮してしまっているがもともとは気が強い方なのだ。
 理不尽に睨まれては黙っていられない。
 けれど真帆が口を開く前に蓮は踵を返して副社長室へ消えていった。
 やや乱暴に閉められたドアを見つめて真帆はため息をつく。

「…全然、似てない親子なのね」

 思わず呟くと、隣で一条がくすりと笑った。
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