お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
「事務所が閉鎖になるのはまだ少し先だし、私にだって全くつてがないわけじゃないのよ。知り合いの弁護士さんだっているんだから」

 とりあえずの見栄を張ってみる真帆に、小夜子は眉を潜めた。

「そうかもしれないけれど、真帆ちゃんを得体の知れない弁護士のところで働かせるなんて心配だわ…」

 今のボスの茂木弁護士は真帆の大学の頃の教授だった人物で、ある事情で窮地に陥っていた真帆を救ってくれた恩人でもある。その茂木と同じ職業を"得体の知れない"と言ってしまうとは乱暴な話だと思うが、母が心配するのも仕方がないのかもしれない。
 何せ父が亡くなった今となっては、母一人子一人だ。

「大丈夫よ。私そんなにやわじゃないんだから」

 心配をかけたくなくて大げさに明るく言ってみるが、母の眉間のシワはなくならない。
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