お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
「それは知っていますが、どうせ今から社食へ行くのです。総務は同じ階ですからわざわざ来ていただく手間が省けるかと思いまして」

 いけませんか?という言葉を飲み込んで真帆は蓮を見つめた。
 役割分担は必要だけれど杓子定規にやっていては返って非効率という場合もあるだろう。
 普段は真帆に無関心なくせにシュレッダーゴミくらいで目くじらを立てないで欲しいとも思った。
 蓮は真帆のそんな意図とは別の部分に引っ掛かりを感じたようだった。

「…君が社食に行くのか?」

(…はぁ?)

 真帆は心の中で聞き返す、社員が社食へ行くことの何が不思議だというのだろう。

「いけませんか?」

 今度は口に出てしまった。
 真帆の言葉に、蓮は意外そうに眉を上げる。それに気がつかないフリをして真帆は続ける。

「…秘書室の人間は社食へ行ってはいけないのでしょうか」

 そんな決まりがあるはずがないと思いながら真帆は尋ねてみる。果たして予想どおり、蓮は「いや」と呟くと首を振った。
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