お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 コピー用紙などの備品配布は、総務課の仕事だ。シュレッダーゴミ同様内線をかければ来てくれるはずだ。

(また真面目に仕事をしている)

 上司としてありえないことだが、そんなことを思って蓮は苦々しい気持ちになった。
 君は何をしているんだ、そんなことをしている場合じゃないだろうという考えまで頭に浮かんで蓮は心の中で舌打ちをした。
 では自分は彼女にどんなことをして欲しいのだろう。

「あ…」

 真帆が蓮に気がついた。そしてその拍子に過剰に積んだコピー用紙が少しずれてよろけた。
 蓮は素早く彼女に歩み寄ると崩れかけたコピー用紙と財布を受け止める。その拍子にふわりと彼女の香りが蓮の鼻を掠めた。

「あ、ありがとうございます」

 全部落としてしまうだろうと覚悟していた真帆が、一瞬、驚いたように蓮を見て微笑んだ。

「ちょっと欲張っちゃいました」

 無防備なその笑顔に蓮は一瞬動けなくなってしまう。この笑顔を見たかったのだと自分の中の何かが言った。
 けれど蓮はやはりそれには気がつかないフリをした。
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