お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 そう答えると彼女は安堵したように口元を綻ばせる。そして蓮が持っているコピー用紙の束に手を伸ばした。
 それに蓮は軽い苛立ちを覚えた。
 まさかこのまま自分がコピー用紙を、真帆に運ばせるとでも?
 蓮は黙って財布だけを渡すとコピー用紙は持ったまま秘書室へ歩き出す。
 
「あ、持っていただけるんですね」

 思わず出たような呟きを背中で聞いて振り返ると、しまったという様子で真帆が口を抑えている。その目を丸くしている様子に蓮は思わず吹き出した。
 うすうす気がついていたことだけれど彼女は思ったことがすぐに口から出る。それは若い彼女の直すべき点かもしれないけれど、なぜかそれが蓮には好ましく思えた。
 蓮が笑ったことに安堵したのか、それともつられたのか、真帆も財布を口元に当ててくすくすと笑い出した。

「すみません」

 と言いながらも反省している様子はない。
 その笑顔に、くだらないことにこだわるのはやめた方がいいかもしれないと蓮は思った。
 
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