お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
「あ、お、おつかれさまです」

 真帆は伸びていた背を正して頭を下げた。彼は会合へ出て行ったときのスーツ姿のままだった。
 会合が終わったら直帰と聞いていた真帆は突然彼が現れたことに驚いたけれど、彼が普段愛用しているタブレットを手にしているのを見てまだ仕事をするつもりであることに気がつく。
 働き方改革などといって社員を早く帰らせても蓮のように大企業を動かす立場の人間にやることなどは際限なくあるのだろう。
 もしかしたら、いつもこうやって夜遅くまで業務にあたっているのかもしれない。

「…まだいたのか」

「は、はい。法務課の資料を作っていました。早い方がいいと思いまして。あの、もちろん室長の許可はとってあります…」

 シュレッダーゴミのときのことが頭に浮かんでなんだか言い訳のようなことを口にしてしまう。
 相変わらずの射抜くような視線が痛かった。

「でももう、あらかた完成しましたのでそろそろ帰ろうと思っていたところです」

 蓮の視線がプリンターにできたてほやほやで置いてある資料に移った。
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