お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
「あ、ありがとうございます…」

頬が染まるのが自分でもわかるくらい、顔が熱くなった。
 蓮がそれを見て瞳を瞬かせた。
 そしてまたあの不思議そうな眼差しを真帆に送る。
 資料を机に置くとまた謎かけのような言葉を口にした。

「…君は本当に秘書の仕事をしに来たんだな」

 当たり前じゃないですか、という言葉を真帆は辛うじて飲み込んだ。
 秘書室の人間に秘書の仕事をしに来たのかなんて、後から考えてみれば随分と馬鹿にした言葉のようにも思ったけれど、その時は蓮の複雑そうな表情の理由がわからずにただ困惑した。
 けれど他には答えようがなくて真帆は頷く。

「…はい。少しでも早く他の皆さんみたいに副社長をサポートできるようになりたいです」

 本心だった。
 社内の誰よりも精力的に動き、誰よりも会社を思う、貴方の役に立ちたい。
 蓮が不思議そうな眼差しはそのままに、力強く頷く。

「わかった」

 そして体ごと真帆の方を向いた。
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