優しい三途の川の渡り方
今度は二人体制でメイクをしてもらった。秋らしいブラウンとゴールドのアイシャドウが目の上に散らされる。
丁寧に引かれた黒のアイライン。瞬きする度に、団扇を扇いでいるのかと思われるほど伸びた睫毛。
ファンデーションが毛穴を覆い隠し、その上にピンク色のチークをデコレーションされる。
最後に、唇が真っ赤に彩った。
まるで別人だ。ここまで着飾ったのはいつぶりだろうか。
仮面を被っているようにまで思えた。
「やっぱり化粧で人は変わりますね〜!」
顔面と髪型が出来上がった私は、そう言って会計を済ます。二人はわざわざ玄関口まで見送ってくれた。
ヒノキの香りが、自動ドアが開くと同時に店内の奥へと引っ込む。
「素敵に仕上げてくださって、ありがとうございました!」
子供みたいなやり方だった。
感謝の気持ちとして、折り紙やビーズで作った指輪などをあげる感覚と同じ。
彼女たちの手に渡したのはハートの4と7。
唖然とした表情を後目に店を出る。
「無かったことにする。問わない」
風に乗って、彼女達に聞こえただろうか。いや、そんなことはどうでもいい。どうせもう二度と合わない。
今日することや会うもの、全てが最後。
酷いかな。人の悪いところばかりを見て、こんな形で評価するなんて可笑しいかな。
馬鹿げてると思われたっていい。私が狂ってることなんてわかってる。
彼女たちが一般的に正しいことも。
それでも一つだけ確かなことがあった。
風が私の髪を操る。顔を覆って、不気味なこの表情が明るみに出ないように。
甘い香りが汚い口に入る。
これはとんでもなく面白くて楽しい、最期の遊びだ。