消女ラプラス
第四章 歌姫
『神様』と出会った日――ユグド・タワーから帰ってきて三日が過ぎた。
逃走はとてもスムーズだった。何故か扉は全て開いていたし、エレベーターも稼働していた。
きっとラプラスが脱出の手助けをしてくれたんだろう。
僕はあれからずっとライプラリを片手に待ち続けている。
連絡が来る保証などない。そもそも彼女は捕らわれの身だ。連絡したくても出来ないのかもしれない。
それでも今は待つしかないんだ、と僕は必死に心を落ち着かせる。
「――女の子の方から連絡が来るのをウジウジ待つなんて、みっともないですよご主人様」
「うわっ⁉」
突然画面にメイが飛び出してきて、僕はベッドの上で尻もちをついた。
「何だよ、お前には関係ないだろ」
「立ち入り禁止エリアへの侵入の片棒担がせておいてよく言えますね。私も共犯者なんですからいつでも相談に乗りますよ?」
「だったら聞くけど、神様を振りむかせるにはどうすればいいんだ? ……恋愛的な意味じゃなくてだけど」
苛立ち紛れと意地悪半分のつもりだったが、メイは意外にも真面目な表情で答える。
「ヒキニートに惚れる神様がいると思いますか?」
「え?」
「ヒキニートに惚れる神様がいるかって聞いてるんですよこのボケナスがッ!」
「急になんだよ! ……あ、僕のことか」
メイはお構いなく目くじらを立てながら僕に捲し立てる。
「そうですよ! タワーから帰ってもう三日、学校に行かなくなってから一週間も経ってます。まずは学校に行って下さい。ヒキニートが一丁前に女の子の背中を追いかけるなんて百年早いッ!」
相変わらずデリカシーのない言い草にイライラしたが、確かにメイが言っていることは間違ってない。
下手したら、こんな頼りがいのない少年のことなどとっくに忘れられている可能性すらある。
「そうだよな……あの子が頑張ってるのに、僕が頑張らないわけにはいかないよね」
僕が鞄を見つめて呟くと、メイが意地悪な口調で言う。
「おや? ご主人様ったら案外色恋沙汰に対する切り替えは早いタイプなんですね?」
「うるさいそんなんじゃないッ!」
逃走はとてもスムーズだった。何故か扉は全て開いていたし、エレベーターも稼働していた。
きっとラプラスが脱出の手助けをしてくれたんだろう。
僕はあれからずっとライプラリを片手に待ち続けている。
連絡が来る保証などない。そもそも彼女は捕らわれの身だ。連絡したくても出来ないのかもしれない。
それでも今は待つしかないんだ、と僕は必死に心を落ち着かせる。
「――女の子の方から連絡が来るのをウジウジ待つなんて、みっともないですよご主人様」
「うわっ⁉」
突然画面にメイが飛び出してきて、僕はベッドの上で尻もちをついた。
「何だよ、お前には関係ないだろ」
「立ち入り禁止エリアへの侵入の片棒担がせておいてよく言えますね。私も共犯者なんですからいつでも相談に乗りますよ?」
「だったら聞くけど、神様を振りむかせるにはどうすればいいんだ? ……恋愛的な意味じゃなくてだけど」
苛立ち紛れと意地悪半分のつもりだったが、メイは意外にも真面目な表情で答える。
「ヒキニートに惚れる神様がいると思いますか?」
「え?」
「ヒキニートに惚れる神様がいるかって聞いてるんですよこのボケナスがッ!」
「急になんだよ! ……あ、僕のことか」
メイはお構いなく目くじらを立てながら僕に捲し立てる。
「そうですよ! タワーから帰ってもう三日、学校に行かなくなってから一週間も経ってます。まずは学校に行って下さい。ヒキニートが一丁前に女の子の背中を追いかけるなんて百年早いッ!」
相変わらずデリカシーのない言い草にイライラしたが、確かにメイが言っていることは間違ってない。
下手したら、こんな頼りがいのない少年のことなどとっくに忘れられている可能性すらある。
「そうだよな……あの子が頑張ってるのに、僕が頑張らないわけにはいかないよね」
僕が鞄を見つめて呟くと、メイが意地悪な口調で言う。
「おや? ご主人様ったら案外色恋沙汰に対する切り替えは早いタイプなんですね?」
「うるさいそんなんじゃないッ!」