消女ラプラス
第一章 魔女裁判
「夕立始(ゆうだち はじめ)君。そろそろ起きないと体育の授業に遅れるわよ?」
夏の訪れを感じる穏やかな日差しが差し込む教室で。
淑やかな少女の声に、僕は飛び起きる。
「し、時雨さんっ……⁉ 僕に何か用ですか?」
「何を慌てているの? 誰にも起こしてもらえない誰かさんを見ちゃったら、放っておけないでしょ?」
そう言って、整った顔立ちの黒髪少女は少し悪戯っぽく笑った。
窓から差し込む陽光を背に笑う彼女は、太陽よりも眩しくて――僕は思わず目を逸らす。
「あ、ありがとうございます……! さ、先に行っててください、時雨さんまで遅れちゃうので!」
「そう? 念押ししておくけどサボりはダメよ?」
人差し指をコツンと僕の額に当てると、言の葉と甘い残り香を残して彼女は去る。
額に残る感触にドキドキして、そっと右手を当ててみる。
僕なんかを起こしてくれる寛容な生徒は時雨さんくらいだ。
なぜなら僕は『魔女』なのだから。
夏の訪れを感じる穏やかな日差しが差し込む教室で。
淑やかな少女の声に、僕は飛び起きる。
「し、時雨さんっ……⁉ 僕に何か用ですか?」
「何を慌てているの? 誰にも起こしてもらえない誰かさんを見ちゃったら、放っておけないでしょ?」
そう言って、整った顔立ちの黒髪少女は少し悪戯っぽく笑った。
窓から差し込む陽光を背に笑う彼女は、太陽よりも眩しくて――僕は思わず目を逸らす。
「あ、ありがとうございます……! さ、先に行っててください、時雨さんまで遅れちゃうので!」
「そう? 念押ししておくけどサボりはダメよ?」
人差し指をコツンと僕の額に当てると、言の葉と甘い残り香を残して彼女は去る。
額に残る感触にドキドキして、そっと右手を当ててみる。
僕なんかを起こしてくれる寛容な生徒は時雨さんくらいだ。
なぜなら僕は『魔女』なのだから。