消女ラプラス
第六章 選択と代償
ユグド・タワーの最上階……システムを統括する管制室を除けばタワーで最も高い階層の窓際で、銀髪の少女はため息を吐いた。
「やっぱり『天使』って厄介な存在ね……それにしても彼は一体どういうつもりなんだろう」
少女が物憂げに青の瞳を上げると、背後から紫色のロングヘア―をしたジャケット姿の男が耳元に囁く。
「どうしたんだいラプ。神様なのに恋煩いかい?」
少女は振り返り、少し怒った表情で彼を見つめる。
「私と『システム』のおかげで世界の全ては分かっても、私の心は分からないのね」
「全てが分かってしまってはつまらない。神の名を背負う乙女の心も……そしてあの少年のことも。だから俺は君たちに興味があるんだ」
ラプラスは毅然とした表情を崩すことなく問う。
「分からないことがあるの。わざと彼の目の前でスペアキーを落としてこの場所に呼んだのも、私と会わせたのも彼が『天使』だから? ……他ならぬ貴方も含めて、『天使』自体は他にも何人もいるのになぜ?」
男は、少女の疑問が嬉しくて堪らない様子で薄く笑う。
「今こそ『天使』である俺の考えが予知出来ないことを恨むべきだろうね」
「話す気はない、ってこと?」
「神様に天使を引き合わせる、そのこと自体に何か問題でも? 俺はいつだって正しいことをしているつもりだよ」
「私が貴方たちに利用され続けるのは構わない。いずれはここを移されて、外界から完全に消えてしまうことすらも。だけど――」
彼女は青い水面が揺れる床に目を伏せた。
「あの人が巻き込まれるのは嫌。犠牲になるのはもう私一人で充分だから」
「出来るならそうしてあげたいけど、向こうから来られたら仕方ないんじゃないかな」
予期していた様な男の言葉と同時に、彼女の頭に電流の様な衝撃が走る。
「嘘……ここまで予測を超えてくるなんて……!」
「フフッ、これは彼自身が選択したことだよ。俺のことも自分自身も恨んじゃいけない。これは君さえも操れない赤い運命の糸なんだ」
男はそう言って彼女の手に自分の手を絡め、青ざめた横顔へ置手紙の様に告げた。
「俺が君と彼に興味を持つ理由……少しは分かってくれたかな?」
「やっぱり『天使』って厄介な存在ね……それにしても彼は一体どういうつもりなんだろう」
少女が物憂げに青の瞳を上げると、背後から紫色のロングヘア―をしたジャケット姿の男が耳元に囁く。
「どうしたんだいラプ。神様なのに恋煩いかい?」
少女は振り返り、少し怒った表情で彼を見つめる。
「私と『システム』のおかげで世界の全ては分かっても、私の心は分からないのね」
「全てが分かってしまってはつまらない。神の名を背負う乙女の心も……そしてあの少年のことも。だから俺は君たちに興味があるんだ」
ラプラスは毅然とした表情を崩すことなく問う。
「分からないことがあるの。わざと彼の目の前でスペアキーを落としてこの場所に呼んだのも、私と会わせたのも彼が『天使』だから? ……他ならぬ貴方も含めて、『天使』自体は他にも何人もいるのになぜ?」
男は、少女の疑問が嬉しくて堪らない様子で薄く笑う。
「今こそ『天使』である俺の考えが予知出来ないことを恨むべきだろうね」
「話す気はない、ってこと?」
「神様に天使を引き合わせる、そのこと自体に何か問題でも? 俺はいつだって正しいことをしているつもりだよ」
「私が貴方たちに利用され続けるのは構わない。いずれはここを移されて、外界から完全に消えてしまうことすらも。だけど――」
彼女は青い水面が揺れる床に目を伏せた。
「あの人が巻き込まれるのは嫌。犠牲になるのはもう私一人で充分だから」
「出来るならそうしてあげたいけど、向こうから来られたら仕方ないんじゃないかな」
予期していた様な男の言葉と同時に、彼女の頭に電流の様な衝撃が走る。
「嘘……ここまで予測を超えてくるなんて……!」
「フフッ、これは彼自身が選択したことだよ。俺のことも自分自身も恨んじゃいけない。これは君さえも操れない赤い運命の糸なんだ」
男はそう言って彼女の手に自分の手を絡め、青ざめた横顔へ置手紙の様に告げた。
「俺が君と彼に興味を持つ理由……少しは分かってくれたかな?」